戦争を取材中に空襲のサイレン。 それがスタジオのアナウンサーの耳に入った時
「中継、終わりましょう」と言ったことに対して賛否両論があると言う。 もっともな話だと思う。
アナウンサーはそれこそ中立が求められる。 私情や個人の意見を言ってはいけないのが、伝える側の責任であり義務でしょう。
ある意味、中継の中断を促す行為は駄目なのかも知れません。 でも、義務的に報道することが良いのかと言うとそうでもないのかも知れません。
人の安全を願うのは、本能なのだと思います。 本能が義務を上回れば、私情になります。
アナウンサーが中継をリードしているのならば、その進行の権限は局なのでしょうかはたまたリードしているアナウンサーなのか。
リポーターなりカメラマンもまた、同じような矛盾に直面しているはずです。
危険なところに行かなければ、その危険さは伝えることが出来ません。 それもまた真実なのです。
情報がシャットアウトされてしまうと、何が起こっているのか何が正しいのかをつかみとることは出来ません。
文章はどのようにも書けますが、写真は真実を映し映像もまた然りです。
そんなジレンマこそが矛盾だと思います。
遠い遠い昔、田舎に帰省した時に墓参りをしましたが
母は父の墓石の前でこう言いました。
「お前もカメラマンならば、今ここで母さんが虎に食われても写真を撮らなければ駄目だよ」
そう言いましたね。
母を助けるのではなく、写真家としての義務を果たすように言ったのだと思います。
写真って、真実を写すから写真って言います。 その写真のお陰で、色々な事を知ることが出来るようになりました。
報道は、現場のリポーターやカメラマンの写真や動画と共にあります。 戦争の悲惨さを伝えるのもまた、それらの人たちです。
とても難しい問題です。 あちらを立てれば、こちらが立ちません。 安全な戦争なんてある訳がありません。
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