過剰な期待は旅を残念にする

 
旅行は楽しい。そうあって欲しい。だからこそ、入念な計画は必要になります。

そういう意味で、旅の疲れを癒し、日頃のストレスを発散するためにも、宿の存在は大きいものとなります。
人は、お金を払い対価を求めます。

知らず知らずの内に、1万円ならこれ位、2万円ならこれ位、3万円なら・・・とそれ相応の対価を要求するわけです。
当然、価格に応じた期待はあるわけで、対価以上なら期待も満足。対価以下に感じたら、期待もぐんと下がる訳ですね。

価格と言うのは、旅館により考え方が異なります。原価から割り出し設定する場合もあれば、接客等サービス部分を付加して
価格が決まることもあります。料理が違えば価格も違います。部屋が違えば価格も違ってくる訳です。

不満を言う人は決まっています。比較するのです。
3万円なら、このぐらいなければと思うのです。2万円の所と無意識に比較してしまいます。
1万円の宿から、3万円の宿にランクアップして泊まる場合、過剰な期待がかかるのが常です。

大きなホテルは、その規模が故に風呂や食事会場、その他の設備が大きくなります。これは、食事とは全く連動しません。
小回りの利く小規模な旅館は、風呂がそれなりに小さくなります。設備も小さくなります。しかし、その分部屋食になったり、
食事会場で充分な量の会席料理を食べる事になります。仲居さんが居てあれこれ面倒を見てくれるのが、良い旅館です。

大きなホテルは、事務的なのが一般的。受付で色々説明を受け、荷物も部屋の鍵も自分で開けるのが普通です。
今の時代、余剰な人員はいないのです。私は、北海道に三泊し、どこでも荷物を持ってくれて、部屋の鍵を開けてくれて、
心底驚きました。これを、期待してはいけないです。
都会でも都心の一流のホテルでは、荷物お運ぶ人がいるのは珍しくはありません。
温泉地では巨大ホテルでも旅館と変わりません。観光で人は訪れるのです。帝国ホテルやニューオータニとは違うのです。
浴衣の世界であることを認識しましょう。

大きなホテルは、夕朝食ともバイキング料理が普通です。部屋食でもバイキングでも、作り置くのには変わりません。
巨大ホテルはバイキング開始前に人が並びます。これは普通です。
ですから、どうしても何でも取りたい人は最低でも15分前に行くことです。
200人並んでいたら、大皿は直ぐに空になります。小学生でもわかる計算です。7時のバイキングに7時30分に来たら、
まず何もお目当ての物は食べられません。追加は従業員が確認してからなので、すぐには来ません、物理的に無理なのです。
多くの方は、ここで文句を言います。ならばない貴方が悪いのです。ここには「何でお客を待たすのよ」と言う意識があります。
電車で30分前に来て、文句を言う人はいないですね・・・、早すぎるのに。自分のすることには寛大なのです。
ちょっとした我慢が、心を豊かにすることは多いですね。

外国人のマナーのわるさには驚きますね。しかしホテル側も対策はしているようです。最近はどこでも二部式にして、団体などとは
分けているようです。良く食べる物がないと言う話を聞きます。何のことはない、揚げ物が嫌いだったりしただけです。
海の宿だからと言って、海の幸が満載とは限りません。巨大ホテルではまず無理、キャパに対する材料の量がコストを超えるのは
目に見えています。たくさん刺身を食べたかったら、外食か料理旅館しかありません。料理旅館でも、刺身がたらふく出ることは
普通の料金ではまずないでしょう。刺身だけが料理ではありませんから・・・。

料理を冷たいものは冷たく、暖かいものは暖かく出す。これはもう原則なんですが、無理なことは分かります。
ですから、巨大ホテルではライブキッチンなりで、天ぷらを揚げたり、肉を焼いたりします。それは必ずねらいましょう。
それだけでも、ぐっと心が満たされますよ。

部屋食の場合、昔とはちょっと違うことに気づきます。
昔は、いらいらするほど料理が遅かったですよ。理由はあります。まず、ビールなどお酒を頼んだ場合。これは品出しが遅くなります。
理由は、酒飲みは急がれるのを嫌うからです。それで、頃合いを見るのです。私はビールを頼んでも、食べながらなのでいらいらします。
待っていてもビールの追加はないからです。そんなのは、仲居さんには分からないのです。一声掛けましょう。
汁物、揚げ物以外は出来ているので、いくら待っても同じです。
ところが、
昨今では、全部並ぶのが普通です。理由は、労働上の問題、無駄に従業員を働かせることは出来ないのです。
これを嫌がる人はかなりいます。全部持ってこられると落ち着かない、と言う訳ですね。
でも、時代も変わっているのです。とは言え、仲居さんは食べた物を下げに来なくてはなりません。旅館によっては仲居さんが
布団を敷くこともあります。優しい心で見てはいかがでしょうか。

何故に旅館は夕食が早いのか。
ホテルのバイキングは概ね個人は6時30分頃や7時がスタート。旅館は5時が当たり前、遅くても6時ぐらい。
バイキングになれていると、早いなーと思います。そこが旅館なんです。料理の作る都合もあり、早くしないと終わらないのです。
バイキングは調理で終わってしまいますが、部屋出しは過程が多いのです。その後の作業に響きますので、早くなるわけです。
仲居さんが帰るのは9時とかになります。それで、朝は早いのです。
3時にお客を迎えて、9時に帰り6時には来ています。考えたら寝るだけの時間しかないですよね。
そんな人達が、旅の私たちを支えてくれているんです。

支払ったお金には、それに見合うだけの対価があったのかも知れません。
大きなホテルの小さな気配り、小さな旅館の見えない気配り。

それに気づいたとき、人はお金に変えられない何かを知るのかも知れません。



BACK