東京都調査資料(東京暮らしWEBより引用掲載)

 

「ラジウム効果をご家庭のお風呂で」などの表示にご注意! ~「微量放射線による効果・性能をうたった商品」の表示を科学的視点からチェックしました~(平成20年5月)

平成20年5月生活文化スポーツ局

消費者の健康志向などを背景に、微量の放射線※1を発生させることにより「細胞を刺激して体の恒常性を高める」、「肩こりやだるさが和らぐ」等、一見、科学的な根拠に基づくかのような効果・性能をうたった浴用品や装身具などの商品が販売されています。

東京都では、こうした「微量放射線による効果・性能をうたった商品」について、不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」という。)の観点から調査を実施し、表示に関する科学的視点からの検討を行いました。その結果等について報告します。

※1「放射線」については参考参照

「微量放射線による効果・性能をうたった商品」とは

本調査では、放射性物質を含む鉱石やセラミック等を用いた浴用品及び装身具のうち、微量の放射線を放出することにより健康等への効果が得られることを表示し、微量の放射線による様々な効果・性能(ホルミシス効果※2)をうたっている商品を、本調査では「微量放射線による効果・性能をうたった商品」とした。なお、商品を浴槽に入れたり、身に付けるだけでホルミシス効果が得られるとした浴用品5商品及び装身具1商品を調査対象とした。

※2「ホルミシス効果」については参考参照

1 調査の概要

(1) 調査対象:
「微量放射線による効果・性能をうたった商品」に係る表示 6件
(インターネット広告表示3件、通販カタログ広告表示2件、新聞広告表示1件)
(2) 調査方法:
販売事業者に対し、表示の客観的根拠等に関して、景品表示法に基づく報告の徴収等を行い、当該事業者から寄せられた回答について、専門家の助言を得ながら科学的視点からの検討を行った。

2 調査結果の概要

(1) 商品から、微量の放射線が出ているとしても、販売事業者が提出した試験結果からは、「それが人体に効果がある」と結論付けることはできなかった。したがって、広告の中で「ホルミシス効果がある」等と断定的に表示することは、客観的事実に基づくものと認めることはできない。

(2) 「北投石」や「ガスタイン鉱石」などの健康上の効果をうたった表示(例えば、「血流をスムーズにして、細胞を活発にします」等)と当該商品に「ホルミシス効果があること」との関連性については、表示の根拠として提出された資料からは不明確であり、客観的事実に基づくものとは認められなかった。

(3) 今回の調査対象とした商品は、すべて通信販売によるものであったが、販売事業者の中には、販売商品に関する十分な情報や根拠を持たないまま、広告の表示を行っているものがあった。

3 消費者へのアドバイス

今回、調査した「微量放射線による効果・性能をうたった商品」の効果・性能表示は、客観的事実に基づくものとは認められないものでした。事業者からの情報だけをうのみにせず、一見、科学的な根拠に基づくかのようにみえても、多角的に情報を収集したり、東京都消費生活総合センターに相談するなどして、商品やサービスを合理的に選択するようにしましょう。

4 事業者に対する指導等

(1) 表示を行った6販売事業者に対し、商品が実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認させるおそれがあることを指摘し、当該表示を改善するとともに、今後、景品表示法を遵守するよう指導した。

(2) 通信販売の関係事業者団体等、16の団体・企業に対し、今回の検証結果等について情報提供するとともに、販売事業者が表示責任者として、必ず根拠を確認の上、客観的事実に基づいた表示を行うことなど、表示の適正化について協力を要請した。

5 今後の対応

指導に従わない場合や、繰り返して違反を行うなど悪質な場合には、事業者名を公表する。

【参考】

※1「放射線」について

「高速で動く粒子」及び「波長が短い電磁波」のことをいい、α線、β線、γ線(X線)等に分類される。

【高速で動く粒子】

α(アルファ)線
α粒子ともいわれ、ヘリウムの原子核である。α線は電離作用が強く、空気中では線源から数cmでとまってしまうほど物質中の飛程が短いため、紙等でも十分遮ることができる。
β(ベータ)線
β粒子ともいわれ、電子1個のことである。β線の透過力は弱く、身体に対しては皮膚だけで止まる。通常のエネルギーのものは数mm程度のアルミで遮ることができる。

【波長が短い電磁波】

γ(ガンマ)線、X(エックス)線
γ線とは励起状態※1にある原子核が安定な状態に移るとき、または粒子が消滅するときに生ずる電磁波である。X線とは紫外線よりも短い波長を持つ電磁波の一種である。X線は発生源が異なるだけでγ線と同一である。透過力が強く、身体の中に深く透過する。鉛等で遮る。

※1 原子・分子等のとりうる状態のうち、最もエネルギーの低い基底状態よりもエネルギーが高い状態。この状態にある原子や分子は、ふつう光を放出してより低いエネルギー状態へ移行する。

図1 放射線の透過能力

※2「ホルミシス効果」について

大量の放射線が生体に有害な影響を及ぼすことはよく知られており、200mSv以上の放射線を短時間に被爆すると、その後の一生の間に、がんが発生する可能性が生じることがわかっている。

微量(低線量)の放射線については、どんなに微量の放射線でも放射線の量に比例して同じ影響が発生するとの考えが用いられている(しきい値※2なし直線仮説、図2参照)。

しかし、最近では、研究により微量(低線量)※3の放射線照射が生物の成長・発育の推進、繁殖力の増進及び寿命の延長等の効果をもたらすこともあるということが示唆され、これを「放射線ホルミシス効果」あるいは「ホルミシス効果」と呼んでいる。ただし、この効果は、必ずしもすべての場合に見られるわけではなく、一般化することはできない。

※2 その値を超えると影響が認められるが、それ以下では影響が認められない量のこと

※3 我々は自然界から1年間で約2.4mSvの放射線被爆を受けている。ホルミシス効果が存在するとすれば、その効果を生じさせるための放射線量は自然界から受ける被爆量と同等かそれ以上と考えられる。

図2 しきい値なし直線仮説の模式図

東京都生活文化局消費生活部取引指導課



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