ピアノ東京写真オーディオスペシャルピアノ編



ピアノ(本物)を選ぶのに迷っている人

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ピアノ(本物)を選ぶのに迷っている人は多いと思います。

例えばお子さんの場合、取りあえず電子ピアノを買って教室に通い、上手になり本物が欲しくなるとか。
自宅にアップライトピアノがあり、グランドピアノが欲しいと思い出したりとか。
いずれにせよ、上達したからそう思うのであり、それは実に正しい。しかしながら、現実にはそうはいかないですね。
住まいが団地やらマンション、一戸建てでも市街地と郊外では状況が異なります。また、防音室の設置や工事、それらが可能なのかによっても
状況は大きく異なるでしょう。

まず、ピアノがなぜ必要か

基本は住まいからなのですが、実際はピアノ重点で考えてしまうことが多いのではないでしょうか。。
これは、本当に重要なことですから良く考えて行動しなければならないですね。
お子さんの場合、習い事ならば何年もやればそこそこには弾けるようになるのは間違いがありません。実際はその先で、音大に進む気があるのか、それとも
そこまでは考えていないのかでピアノの選択は大きく異なることを考えるべきでしょう。多くの場合、先のことなど全く考えられずただただ音の良く出る楽器が
欲しい、本物が欲しいと言う現状で物事を考えてしまうことでしょう。地方ならば、子供は都会に出るだろうし、娘ならば嫁にも行くでしょう。
物は残る、非常に大きくて邪魔になる物が・・・。そんな例は山とあります。

◆ピアノの価格◆

ピアノはグランドピアノこそ高価ですが、アップライトピアノならその半額程度で購入は可能だし、中古なら30万円代からいくらでも売っています。
ピアノは電子機器じゃないので10年20年は全く問題なく、保守さえしっかりしていれば新品同様に使えます。但し、グランドピアノの中古は多くはないし
程度も良い物は決して安くはないです。グランドピアノが出回らないのは、アップライトピアノのようにグランドピアノへの買い替えがないことに起因すると思います。
ホテルや旅館など、使われなくても家具調度品にはなるので譲渡や廃棄されることもないからでしょう。

よって、ピアノ購入の選択肢は価格によるならば(もちろんこれが重要)小型の新品グランドピアノか新品アップライトピアノということになります。
これは上限が120万円位の話で、上限が50万円位だと新品アップライトピアノか中古アップライトピアノの選択となります。
40万円~30万円だと新品アップライトピアノの選択肢はないから、中古のアップライトピアノか高級電子ピアノと言う選択肢になると思います。

◆グランドピアノとアップライトピアノの違い◆

良く言われることに、グランドピアノとアップライトピアノの構造的な問題があります。音以外でいえば、アップライトピアノは構造上素早いトリルは出来ないと。
指を完全に上げない限り次の音は鳴らせないのです。響板の響きやタッチよりも大きく異なることであり、この点を最重要の選択肢にしなければ
無駄な買い物にもなりかねないことを第一に知るべきです。いわゆる奏法にかかわることであり、それにより表現は大きく異なるためCDを聴くような
演奏は不可能だと認識しなけれならないのです。つまり、楽譜通りに弾くことは可能だがグランドピアノで成せる音は出てこないし、出そうとしても機構的に出せません。

つまり、アップライトピアノでピアノを極めたいとするならば必ずつまづいてしまうし、行き止まる。自宅でアップライトピアノで練習し、教室のピアノが
グランドピアノであるならば(それが普通)全てが混乱してしまうのです。習い事のお子さんならば、違いに戸惑いピアノを止めてしまう可能性もあるでしょう。
もちろん例え音大を目指すと決めたお子さんでも、ここでがっかりすることは全くないです。音大の受験では当然グランドピアノを使うが、正確に基本が弾ければ
良いのであり弾きやすい弾きにくいなどは全く関係がないからです。

ここで素朴な疑問が・・・。 昔のピアニストや(ショパンやリスト)がアップライトを弾いてたのでは?という疑問です。 しかしよく考えるに、ピアノは日本人向けに
作られはいません。指も長く手も大きい外人向けのもの、これは全く変わっていません。 体力と手の大きさで劣る日本人には辛い楽器なのだと思います。
アップライトで幻想即興曲を弾くのには、相当な体力を必要とします。これはショパンの曲全般に及ぶ問題点です。


◆ピアノに対する誤解◆

ひとしきりの誤解に、グランドピアノの鍵盤は重いとか電子ピアノの鍵盤は軽すぎるとか言われることがあります。これはもう誤解なのですが、実はある意味正しいです。
現在のピアノの進化は目覚ましい。それは本物でもそうだし、電子ピアノでのそうです。10年前の感覚やら認識を覆す現象が起きているのが現状です。
現在のグランドピアノはタッチが軽いものが多い。これは考えれば当然で、好き好んで重い鍵盤と格闘しようなどどピアニストは思わないでしょう。
適度なタッチこそ必要ですが、重い鍵盤は良いことは何もないです。逆に、電子ピアノは重くなる傾向にあります。と言うよりはグランドピアノに限りなく近づいてきた
と言っても良いでしょう。4~5万円の物はさすがにバネだけですが、それでもスカスカではありません。20万円を超えれば木製鍵盤の採用です、タッチもほとんど
グランドピアノそのものと言って良いです。なにせ、今時のグランドピアノは軽めなのです。
教室でもグランドピアノは設置していますが、多くは一世代前の機種が多くそれ以前の物も非常に多いです。よって、タッチは重いし部屋も狭くグランドピアノの
能力を発揮とは言えないのは確かです。これは学校でも同様であり、ピアノは最新機種とは限らないのです。何せピアノはもつのです。
それ故に、ピアノの教師はピアノに関し最新の知見を持ち合わせているとは限らないのが実情です。多分に使用しているピアノは最新のものではないからです。

それでは、アップライトピアノはどうでしょうか。これもまた進化が著しいです。いわゆる低価格機種はさすがに鍵盤が重いです、100万円~150万円を超える機種になると
鍵盤はグランドピアノのように軽めになります。この差は非常に大きい物があります。ピアノ教室に設置のアップライトピアノは当然ながら普及機種で、しかも新型は
設置されていないのが多いです。それで、タッチも重く弾きやすいとは言えません。もちろん低年齢のお子さんが主なので確かなタッチと言うのであればそれでも
問題ありません。自宅でアップライトピアノを導入するのはこの価格帯なので、練習には充分であるがそれだけのこととも言えます。

◆弾き方でピアノを選ぶ◆

つまり、ピアノは何が弾きたいのか、どういう弾き方をするのかで大きく選択肢が分かれるということです。
トリルやきめ細やかな響きを求めない曲だけを弾くのであれば、グランドピアノではなくても十分に音楽を楽しみ演奏を楽しむことが出来ます
もし、そうでなければグランドピアノか高級電子ピアノしか選択肢はありません。

◆プロになれる確率◆

800人と言う原則が世の中に存在するのをご存知でしょうか。
一流のプロフェッショナルとして世に出る人の数のことです。業種を問わずこれは変わらないのです。
年間何千人と音大を出、何万人やら何十万人やらの卒業生が出るにせよこの法則は変わらないのです。
プロゴルフにせよプロボーリングにせよ、プロ野球にせよそれで暮らせるのは一握りでしかありません。
理由は至極簡単、飛び出なければだめなのです。ピアノもしかり、ピアノは練習すればだれでも遅かれ早かれ弾くことが出来る。
ピアノはそういう楽器なのです。つまり、スポーツと異なり練習次第である程度までは誰でも行くことが出来るのです。
それだけにピアノで生計などは難しいと思います。ピアノを教えることは音大を出ていれば難しくはないでしょう、というよりもそういう方向が正しいのかも知れません。
そうした職業を目指すのでなければ、高級品のピアノを早くから買い与えるのは道理に無理があるかも知れません。

◆時間の浪費、時流に流される◆

昔ピアノ習って買ったけど、忙しくて気が付いたら何十年も弾いてなかったと言う人は非常に多いと言います。まあ、残念ではあるがそれでも家にピアノがあれば
また弾くこともあり、昨今ではそういう人が多いようです。大人のためのピアノ教室もあちこちでやっています。
ピアノ(音楽)のような積み重ねが必要なものは、早くから手をつけないと確かに習得は難しいです。そういった意味からすると、習い事をさせるのは間違ってはいません
なんでも入る柔軟な脳は、小さい時だけと言っても過言ではありません。
全く知らない者が、大人になってからピアノを始めるのは非常に困難を極めます。大人には仕事があり練習時間も限られるし、引退してからでは時間はあれども
知力の方が追い付かないことは理解に難しくないでしょう。

◆ピアノ選択の条件、環境◆

ピアノの選択にかかる条件は、ピアノを極める(生計を目指す)のか、アマチュア(趣味)でいいのかの二つに一つしかないことになります。
前者であればそれ相応の投資を覚悟しなければならない。単純に考えて、ピアノ教室に通ったとして上級レベルに達するには10年はかかるとされます。
週三回の通いなら10年でも1800時間にしかならないです。費用は100万円を超えるでしょう。そこまで通うことは困難なので、年間10万円、
5年にしても50万円はかかる計算となるはず。年間20万円なら100万円の出費になります。
独学ならばお金はかからないが、到達にも上達にも数倍、それ以上の時間が必要になるのは間違いがないです。第一に子供に独学はあり得ません。

それほどにお金がかかり、習得に時間を要するピアノですが問題は環境でしょう。ピアノが弾ける環境にあるかどうかが重要になります。
四六時中ピアノを弾いていて周囲に問題がないのか、そういう環境です。
音と言う物は、出している本人は全く気にならないですが、周囲の物には騒音以外の何物でもない・・・、それをはっきりと認識しなければピアノの導入は難しいです。

◆ピアノの音の性質◆

騒音と言う点では、戸建ても集合住宅も全く差がないです。戸建てでは音が筒抜けになり、郊外なら数キロさえ届く。コンクリートの集合住宅では、戸建てより
壁は厚い物の隣とは15センチや17センチの世界です。中低音は筒抜け同様、特に階下や隣は最悪です。
ピアノよりはるかに音の小さいステレオですら、普通の音量でもコンクリートは確実に音を伝えてしまう。このことは意外に知られていないのです。
筆者は実際、マンションの隣の部屋で自宅の膨大な音漏れを聴き驚いたことがあります。壁は17センチ、隣の音は全く聞こえないのにす。それ以来
ステレオは隣家不在の時以外音出しは止めてしまいました。コンクリは堅いコツコツやドンドン、低音は良く伝えてしまうのです。掃除機の音は窓からしか聞こえなくとも、
掃除機をかけているゴロゴロ引っ張る音や、あちこちにぶつかる音は良く響くのです。
戸建ての場合は悲惨と言うしかないです。防音対策の優れた最近のプレハブ住宅なら、防音レベルはコンクリート住宅に近い防音レベルと言えるのですが・・・。。
しかし、隣家との間隔が数メートルにも満たない場合は注意が必要なのは言うまでもありません。
筆者の田舎の家は、隣と10メートル以上は離れていたのですが、楽器の音はまさに筒抜けでありました。犬の声は100メートルは楽に届くのです。
ちなみに、犬の鳴き声とピアノは同じレベルです。もちろんピアノの価格や新旧に関わらず同じく音は出ます。

◆防音が必須◆

要するに都会では、アップライトピアノ、グランドピアノを問わず普通の状態での演奏は難しいと言えます。人間の聴覚は夜間程感度が増すので、夜間の
ピアノは禁物であす。それでは、どうしたらいいのか。
答えは以下のようになります。
戸建ての場合は、防音工事をした防音室を作るか防音室を室内に設置する。集合住宅の場合は、同じく防音室を室内に設置する。ただし。防音室の
重量は4.5畳でも1トン近くにもなるから、マンションでも設置には制限がかかるでしょう。価格も既成のもので250万円はします。
既成の物はピアノ教室にある部屋と思えばよいです。余裕も何もない、音も逃げ場のない狭い空間です。戸建てに防音工事をするならば、大げさになり
費用も1000万円近くは覚悟が必要となります。
ピアノは、車とほぼ同じ予算程度で手に入るが、鳴らすのには結構敷居が高いというのが実態です。筆者もかかる理由で本物のピアノは断念しました。

◆ピアノの音量レベルとは◆

ピアノは基本音量の調節ができません、またするべきものでもないです。そうでなければ、生ピアノの意味はないと言っても良いからです。
しかし、90db~100dbの音量が普通に出ることをまず理解しなければならないでしょう。
6畳間において、控えめな音量でリスニング位置で聞くレベルは60~75dbです。筆者のアンプのボリュームは1~1.5程度、2までも行っていないです。
なお部屋の暗騒音は深夜38db、昼間50dbです、夕刻5時で47db。スーパーの二階で測定する騒音は75db。スーパー4階65db、
ビル工事中の幹線路上の騒音が71db~75db、総合病院の一階通路65db、二階待合57~60db、病棟昼間55dbが実測です。


◆音の大きさの感覚とエネルギー◆

つまり、重度難聴でもピアノの音は聞こえる(もちろん全ての音ではない)。ここで勘違いしやすいのが数値です。
デシベルは対数なので、感じ方が普通の数値とは全く異なることを知らなければならないでしょう。
つまり、6dbは6倍ではなく2倍、10dbは同じく10倍ではなく3倍、20dbは20倍ではなく10倍、30dbは30倍ではなくおよそ45倍、40dbは40倍ではなく100倍、
50dbは50倍ではなくおよそ450倍、60dbでは60倍ではなく1000倍となる。このように、エネルギーは対数で変化するのです。

つまり騒音計で10db上がったとすると、3倍エネルギーが増しているが人間にはほぼ倍の音量に聞こえるはずです。10db減衰しているならば、
ほぼ半分の音量に聞こえることになります。

◆住宅における騒音レベル、ピアノの音◆

コンクリートの防音について、125Hzから4000Hzまでの透過率は厚さ20センチで40dbから65db程度、500Hzで53db程度とされている(D-55)。
また、窓ガラスは単層で15db~30db、防音には合わせガラスが必須となります。

ピアノの音は壁レベルで35dbから45dbの音が漏れており、窓を閉めても、窓からは70~85dbの音が漏れると言う計算になります。
これは壁厚の厚い20センチであり、15センチの壁厚だとさらに遮音性が低下、50db程度の音漏れがあることになります。壁厚が50センチでも60db(500Hz)にしかならない。
そこまで極端でなくても壁の厚さを数センチ厚くしただけで、数dbは音量が低下するのです。
僅か数dbでも人間には半分の音量に聞こえるから、無駄ではないです。しかしながら、ピアノの音は非常に大きいのです。

ちなみに、ピアノ音源90dbの場合天井では10db減衰し80dbとなりますが、壁厚20センチの場合損失は55dbとし、階上では25db(500Hz)の音漏れがあるが、低周波程
遮音は落ちるので実質35dbの音漏れは生ずると考えられます。
8畳長辺の角に設置した場合、隣との壁の距離はおよそ4メートル、ピアノ音源90dbの場合壁面では78db、壁厚20センチ透過後は23db(500Hz)となり実質33db
程度の音漏れは生ずると考えられます。ピアノ音源が100dbの場合はそれぞれ、45db,43dbとなります。

◆ピアノの設置環境◆

これにより、ピアノの設置はかなり限定されることがわかります。ピアノを置くならば一階、角部屋、二階住居なし(住民なし)が望ましいことになるのです。
そして、ピアノの置く部屋は広いこと、天井が高いこととなります。そして、徹底した防音対策を怠らないことです。

◆ピアノによる事件◆

今から大分前の1974年、有名な事件が起きています。「ピアノ騒音殺人事件」です。団地で起こった事件ですが、階下から聞こえる子供のピアノの音に
激怒した住民が母子3人を殺害したいたたましい事件です。死刑は確定したのですが、未だに刑は執行されていないと言う。
測定の結果は規定内数値であった(二階において基準内40db~45db)とされますが、、実際にはわからないです。
もし、窓を開け放ってあれば、間違いなく音は届くであろうし、
閉めたにせよ、当時の窓ガラスではほとんど遮音効果はなかったはずです。この事件により、床の厚さが変わったと言います。
周囲にはまともな人間ばかりいるとは限りません、好まざる者にしてみればどんなに些細なことでも気になる物。それは確かに誰でも変わらないことです。
殺人は犯罪だが、犯人が自分は被害者だと言っています。確かにそうなのかも知れない。諸刃の剣なのでしょう。
かかる被害を受けないためにも、我々はピアノの音には気をつけたいですね。

◆選択肢のない場合のピアノ◆

そんなせちがらい世の中で光明と言えば、電子ピアノです。比較的軽く、比較的価格が安い。音量は無段階調整、ヘッドホンも使えて夜でも問題ありません。
引っ越しでもしなければピアノは無理というならば、これしか選択肢はないでしょう。もし、ピアノの代替えとして使うならば機種はある程度上級の物を選んだ方が良いです。
筆者は先行きにピアノもありかなということで、ヤマハのクラビノーバCLP-545を選びました。もし、買い替えをしないならばもう少し上を購入が良いでしょう。
最上位機種の方がスピカーの数もアンプも多く、よりダイナミックに演奏が出来るはずです。
ただ、電子機器なのでピアノのような耐久性はないと考えた方が良いです。電子機器は確実にグレードアップするから、持ち続ける必要もありません。
別項でも述べていますが、普通の音量ではピアノの音にはならないということを知っていて欲しいです。生の弦の響きに会いたければ、ピアノを弾きに行けばよいのです。
割り切る必要はあると思います。電子ピアノならではの付帯設備は十分に楽しいです。これはピアノにはない特徴なので、暇があったら大いに利用するのが良いでしょう。

もし、技量がそれなりにあるのならヤマハでもAvantGrand(アバングランド)シリーズは良いと思います。しかし、N3の価格はグランドピアノも買える価格です。



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