ピアノ東京写真PLUS ピアノ編

大島紬のようにありたい・・・。   2019.7.26


普通の織物は地糸の経糸と、柄用の緯糸で織り成します。 地糸は技術・・・、絣糸は模様を表す。  地糸は決して目に触れることはありません。

緯糸だけが模様を表す使命を担います。 目に触れない地糸だけど、地糸がなければ織物葉できません。

大島紬などの絣系は、縦横の染糸で柄を織り成します。 現在ではコンピューター化や大幅な電子化によって、伝統工芸品の指定は姿を消しつ

つあります。 また、ほとんどが本来の紬糸ではなく絹糸を使っています。 経糸緯糸共に絹糸となっています・・・。


しかして経糸と緯糸の織り成す紬・・・、そう・・・大島紬は出来ません。

手機による紬は一日に数センチも出来ません。 柄が精緻であればあるほど、一日に織れるのは短くなります。  一反の長さはおよそ12メートル・・・。

日に三センチならおよそ400日。 優に一年は超えてしまいます。 精緻なものは2年も掛かります・・・。 織り上げのみならず、繭から染まで

幾多の工程を踏まなければ、大島紬は完成しないのです。  織り上げた反物を広げると、柄には好き好きが生じますが・・・。


大島紬の染は泥染めと言って、泥田に足までつかり糸を染めます・・・茶色に色づいた大島紬の糸はそうして染め上げます。  

紺色の大島紬の糸は藍染で、藍の染料の壺に入れては乾かし、入れては乾かしを何度も繰り返して染め上げます。 藍は非常に染まりにくいのです・・・。

当然のごとく両手は藍で染まってしまいます。 泥田も藍も、過酷なことに変わりはありません。

織子さんはそんな大変さを知っているからこそ、丁寧に織り上げるのです。  

出来上がった大島紬を透かして見ると、その日に何があったかが鮮明に分かります。 糸の乱れは、心の乱れ・・・。  全て織物に出てしまうがため、

家族は平穏に過ごすのだそうです・・・。

もうこれは遠い遠い昔の事なのかもしれません。 手織りの手間賃は想像を絶ずるほどに低く、伝承する人は減少の一途をたどっています・・・。


出来上がった反物は正札を付けて並べられますが、工程の大変さを知っている身には、製品の差別ができないのも事実です・・・。  

それを販売する営業は、単なる販売員では決してありません。 販売員こそが、最後の職人なのです・・・。

どんなに素晴らしい製品も、誰かの手に渡らなければ・・・ただの布なのです。 大島紬が織り上がった時には、織子さんは一晩抱いて寝るのだそう・・・。

台風の多い奄美ですから、そんな気持ちが痛いほどに分かります。 

機械編みには見られない、手編みの思い・・・。 大島紬に出会うことがあるならば、そっと明かりに透かしてみてください・・・。

そこには編める人の思いが表れています。 大切な繭の命と引き換えに、新たな命を織り成す・・・。 


そんな思いが大島紬にはあります。





「追 記」

原稿を書き終えて、幾多の間違いや記憶違いに気づきました。 大島紬には柄の細かさを糸の数で表します(マルキと呼びます)。

大島紬は紬糸を現在は使っておらず、絹糸を使用しています。 それは結城紬も同様です。 名前だけが残りました・・・。

しかし大島紬は完全な分業です。 一人で全てが出来ないほどに工程が多いのです(数十工程あります)。 携わる人も多いです。


ここで、大事なことを言い忘れていました。 販売されて反物は仕立て上げられますが、納品までは完成ではありませんね。

優秀な仕立て職人によって、反物は着物という形になって命を得ます。  永い長い時間と人の手を経て、形になるのです。


ピアノも人が弾く限り、同じだなと思います。  織物で言う地糸は、基本・・・そして練習なのでしょうね。

素晴らしい曲は、織り成す経糸緯糸・・・。   焦ることなく、地道に少しづつ・・・。  

ピアノから一つの楽曲が、この世の誰かによって演奏される・・・。 何というドラマティックな出来事でしょう。


演奏するあなたは、最後の職人。  生まれ変わった繭からのメッセージです・・・。

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