放射能レンズ(俗称アトムレンズ)

スーパータクマー55mmF1.8 (1965-1971年) 



朝日ペンタックスSP 文部科学省における平成17年9月27日のペンタックスの報告があります。
その報告によりますと、20キロの酸化トリウムを含む光学片を保管しているというものです。その報告を受け、原子力安全課では調査員を派遣し保管状況を確認し、安全性が確かめられたとしています。ペンタックスによりますと、昭和40年頃から昭和52年に掛けて当該光学片を購入し光学レンズとして加工していたとされています。なお昭和50年代の後半には事業所の保管ビットに移動したとのことです。
(以上文部科学省資料)
日本で放射性物質を含む光学レンズが生産中止されたのは、1970年以降とされていますから、ペンタックスはややその期間が長かったのかもしれません。
レンズがアンバーに黄変するのは、放射線の放射によるものです。ただし、通常より多いとはいえ毎日長時間使用しない限り被爆は通常レベルと考えて良さそうです。
これらの物質を光学レンズに混入させる理由は、単に光学性能の向上を目指す理由によります。
よって、同世代の非混入レンズよりは性能が良いのです。

なお、コニカミノルタでも平成17年10月6日に同様の報告を行っています。この際の報告量は酸化トリウムが2.9キロ相当というものでした。加工は昭和47年頃から昭和60年頃までとの発表。何れも含有ガラス片を購入し加工したものです。
スーパータクマー55mm
現在ではアトムレンズは当然ながら生産されていません。
1977年以前のレンズで黄変しているものは、アトムレンズの可能性が否定できません。黄変が放射能の影響である場合、レンズは必ずアンバーになると考えて良いでしょう。これはコーティングの劣化や、バルサムの劣化などとは全然別の次元の現象です。放射線による結晶破壊によるガラス化とされています。
光学透過率は当然減少(劣化)しますが、屈折率は変らないと考えられます。そうならば、描写は光量のロスだけと考えて良いのかも知れません。(当然波長の変化もあるでしょう。)
光の収束に関してはマイナスにはならないと考えられます。
現在のEDレンズと同等の働きをしたと考えられています。
つまり、シャープなレンズなのです。このトリウムレンズはおよそ一枚のみが使用されていたと考えられています。黄変はトリウムの崩壊によるものでしょうが、黄変は全てのレンズに及んでいるようにも見えます。これが他の含有物によるものなのかはわかりません。
通常現像。充分にアンバーです。(フードはレンズと関係ありません) 彩度を最大、輝度をプラスした画像。
黄変があるために強烈に色が付く。
東京写真スーパータクマー55mm 東京写真スーパータクマー55mm
通常現像。どの角度から見てもアンバーです。 彩度を最大、輝度をプラスした画像。黄変が良くわかります。
東京写真スーパータクマー55mm 東京写真スーパータクマー55mm
通常現像。黄変がわかります。 彩度を最大、輝度をプラスした画像。
東京写真スーパータクマー55mm 東京写真スーパータクマー55mm
通常現像。肉眼で見たより黄変は少ないように見えます。 彩度をプラス、輝度をマイナスした画像。
これによりレンズの黄変がはっきりわかります。
東京写真スーパータクマー55mm 東京写真スーパータクマー55mm
通常現像。写真では肉眼ほどに黄変がわかりにくいです。 彩度をプラス、輝度をマイナスした画像。
後面からは応変がさほど目立ちません。
恐らくトリウムレンズが、後玉に使われているためでしょう。
東京写真スーパータクマー55mm 東京写真スーパータクマー55mm

WEB上の測定データによると、放射線量は前玉より後玉の方が数倍以上多いらしい。しかし、10センチも放せば通常の5倍まで激減するとのこと。
放射線量は50mmF1.4が55mmF1.8より数倍も多いというデータもあるようです。当然といえば当然かもしれません。
昔50mmF1.4を使っていて、なんでペンタックスのレンズは小さいのに描写が良いのだろうと疑問を持っていたものでした。
高屈折ガラスを使っていた訳なんですね。納得がいきました。
まあ、いずれにせよ大変なレンズには違いがないですね。

ニコンレンズにトリウム入りレンズがない、らしい。
察するにトリウム入りレンズを造るのには、トリウム入り光学片を生成しなければなりません。
全てを一貫して製造するのは大変な事であり、製造コストは跳ね上がります。
ならば、必要な光学片のみを購入しレンズを作り上げるならばコストも効率も上がる論理です。
しかして、アトムレンズは各社に採用されたのではないでしょうか。
ニコンはどうでしょうか。ニコンは考えるに、材料の選出から自社オンリーでやってきた歴史が見て取れるメカーです。
あくまでも想像ではありますが、トリウムを選択せずにランタンを選択し高屈折レンズを造った可能性が極めて高いと考えられます。
それはレンズ設計者の層の厚さ、でありましょう。
ニコンF発売時(1959年)には既に、高解像度のニッコールレンズ群を発売している事実があります。
当時の発売レンズの組成、構成並びに中心解像度・周辺解像度などを調べて見ると非常に解像度が良く安定しているのです。
図抜けているのではなく、平均しているのです。これがトリウムレンズ不使用の疑義点とtokyoは分析している理由です。
つまり、年代による解像度の違いが非常に少ないメーカーなのです。これは光学ガラスの安定した性質の焼成に他ならないと考えます。
いかがでありましょうか。

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TOKYO PHOTOGRAPH by shayuzin

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