ポジフイルムについて(2002年以前の事情)


1970年撮影のポジフイルム、コダクローム25。 ASA25という超低感度・微粒子のスライド用フ
イルムです。コントラストが強いフイルムだし、許容度が狭く非常に扱いにくいフイルムです。
スライドで100インチに映写しても全く破綻がなく、左にいる人の洋服の赤や、
右の人の白い服などが再現されています。PCに取り込む段階で
雲が白飛びしてしまいましたが、実際は白飛びしていません。 これはコダクロームですが、
通常のポジフイルムでも耐用性はネガフイルムよりははるかに良いといえます。
なお、コダクロームはK-14処理という特殊な処理を必要とするので、自家処理はできません。
また、国内でもK-14処理のできる現像所は二箇所だけです。 
もちろん、ラボが取り次いでくれるから、現像自体はどこにでも頼むことはできます。 
日数がかかることと、料金が割高なのは致し方ないでしょう。
この頃のポジフイルムで、この洋服の赤と抜けるような白は中々再現できなかったものです。
どこかフジフイルムのベルビアのような感じですが、どちらかと言えば地味な発色で
派手さは全然ありません。ベルビアは日陰が真っ青になってしまいますが、
このフイルムは全くそういう所がないのです。
32年も前だと、見た通りに写るなどということは大変な時代だったのです。
コダクロームは現像の方式が違うので、自家現像はできません。 
それ以外ならポジフイルムも自家処理が可能です。 しかし、フイルム処理は行程が多く
大変です。 第二現像処理がありネガの現像とはやり方が異なります。 
印画紙の方はコストが高く、液・紙ともに手に入らないので自家処理は無理でしょう。 
現像液に劇薬指定成分があり、量販店で売ることができなくなったのです。 
フイルムなら可能です。 いまの現像液はベルビア対応らしいからやりやすいでしょう。
だいぶ前にやった時はベルビア非対応で、すごいグリーンかぶりが生じ
使い物になりませんでした。もちろん通常のポジフイルムは大丈夫でした。
ポジフイルムの現像は、切り現という方法を良く使います。 
フイルムの先端部分1〜2コマをはさみで切って、試し現像をするのです。 
ネガはそのままでは解からないので、ポジフイルムならではのテスト現像方法です。 
ポジフイルムも露出の増減が可能なので、出来上がりを見て現像時間を調整します。 
一本のフイルムに露出のバラツキがある場合は、どれかが無駄になるのはしょうがないことです。
◆                     ◆     
ポジフイルムを使い出すと、色のクリアーなこととシャープネスの点で、
もうネガフイルムを使わなくなる写真家が多いと聞きます。 
確かにポジフイルムのメリットはたいしたものなのですが、欠点もあるのです。 
たとえば、コントラストが高いことです。 これは同じポジでもデジタルカメラにはかないません。
デジタルカメラやネガフイルムは基本的に軟調です。 ポジフイルムに比べて圧倒的に
ダイナミックレンジが広い点です。 印画紙ですら表現は不可能なくらいなのです。
それがひとつの欠点。二つ目はコストが高いことです。
現像料も高いし、プリントは嫌になるほど高い。 
三つ目は露出が難しいことです。 いったんシャッターを押してしまったらそれで普通は終わり。
プロが露出を変えて何枚も撮るのは、保険のようなものです。 
いわゆる写真館ではポジを使うことはありません。 肌のディテールがポジだと
表現できないからです。 白飛びするフイルムは写真館では使えないのです。 
写真館では、通常ASA160のブローニーフイルムを使用します。 
このフイルムは非常に軟調ですが、人肌から着物の模様まで実に穏やかに描写します。
このように、コマーシャルから風景まで
フイルムは用途によって使い分けなければならないのです。 
それはフイルムの特性を知ることで色々な表現が可能になるからです。


戻る