東京写真オーディオスペシャル
ナカミチのカセットデッキ来る
ナカミチのデッキは初めてである。当時はソニーを使っており、ナカミチは高額商品であり対象外であった。 | ||
ナカミチ 581 1979年製 | ||
実は購入には随分迷った。候補が5~6点あったのだが、その中でも一番に 古い機種だったからである。1979年製で、ソニーのTC-K5とほぼ同時期の製品である。 動作品との事であったが、ベルトがちょっと心配であった。 中を見ると基板がうっすらと汚れている。手は入っていないようで、ただヘッド回りに ほこりはなくその部分は手が入っているのかも知れない。 綿棒とアルコールで洗浄する・・・。動作には問題がない。 基準となるテープを入れてキャリブレーション調整、これを何度か繰り返す。 テープは3ポジションで、EX、SX、ZXとなっている。イコライザーは70と120の二種類。 EXがノーマルでSXがクロームポジション、ZXがメタルポジションと推測したら、 その通りだった。バイアス、録音レベル共に左右別々に調整が出来る。 非常にマニアックなカセットデッキである。 録音再生は兼用アンプなので、同時モニターはできない。ただし、キャリブレーションは 録再ヘッドが独立なので問題なく出来る。 2モーターで動作は小気味よい。ピークレベルメーターだが、VUメーター同様 アナログ指針は見ていて安心感がある。照明は長いメーターパネルを電球で照らす方式、チュナーのそれと同様である。 |
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何しろ横幅がある。50センチなのだ。 この大きさは、中の基盤のせいである。二層にせず、平らに構成しているので幅を取るようになったらしい。丸形三連のつまみは1981年の582Zまでである。 思いのほか使いやすい。 アジマス調整にはオシロスコープが必要で、ない場合は耳に頼るしかない。 メタルテープが開発されたのが1978年、1979年ナカミチ渾身ののメタルテープ対応デッキである。 アジマス調整をしたが、どうも音が抜けない。ソニーでナカミチのテープを再生したら、 なんと180度位相が狂っている。何度やってもダメで、よくよくデッキを見ると録音アジマスのギアが欠損している。ヘッドが傾いているのだ。ギアが無くバネで押されているのでどうしようもない。どうやら、調整時に緩み過ぎて中に脱落したらしい。 しょうがないので、ソニーで録音したテープで再生のアジマスをとる。 録音再生はまずまずの結果。しかし、ナカミチで録音したテープをソニーで再生すると明らかに音がなまる。再生アジマスはソニーのテープに合わせたので逆は問題ない。 さて、困った・・・。 |
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取りあえず前面のパネルを外したら、ギアは落っこちてきた。これをねじ込むわけだが、ホルダーの枠が微妙に邪魔でどうにもならない。バラすのは嫌なので カセットパネル前面のドライバー差し込み穴を大きくすることを思いつく。ハサミの刃で削って穴を大きくして無事に差し込み完了。 調整は、録再ヘッドが平行になるよう目視で仮合わせをする。 アジマスの調整にはリサージュ波形の観測が必至。ここではネットからフリーソフトを拝借する。 |
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パソコンからのRCAコードをセレクターに繋がない状態のノイズレベル。 120db程度。 |
デッキ走行無音部のノイズ。デッキにより5~10dbほどの違いがある。 デュアルキャプスタンはノイズが低い。 |
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400Hzの信号を入力する。400Hzではなく378Hzとやや低い。 この信号を録音する。デッキはナカミチ581。 |
ナカミチ581で再生した状態。ややずれがある。 | |
15000Hzの信号を入力する。左右 -24db、-24db | ||
調整は簡単ではない。テープは走行するので、常に波形は線と楕円を繰り返す。 これはテープタッチの問題もあり、ヘッドの摩耗の影響もある。 下の写真の様に調整を追い込むと、何とか妥協のレベルには達する。 しかしながら、これで終わりではなかった。 これは恐らくに360度位相がずれた状態。他のデッキがあればそれは直ぐに解る。 つまりこれを直すのは、他のデッキで録音した基準となる信号が必要なのだ。 それでアジマスを再調整してから、録音ヘッドのアジマスに入る。 これは嫌になるほど面倒な作業である。リポート時点で3日はかかっている。 これはナカミチ581の場合だが、他に5台もデッキがある・・・。 これを全て調整するのだ。 |
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左右-27db、-36db 9dbの差がある。これを調整していく。→ | 左右-29db、-31db 2dbの差に縮小、リサージュ波形は右肩上がりの楕円になる。 2db程レベルが下がる。 |
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左右-27db、-28db 1dbの差。限界値なので一応終了。 | レベルを少し上げて表示。 左右-24db、-26db。 2dbの差。 | |
それぞれのデッキにはそれぞれのアジマスが存在する。スタンドアローンで録音再生ならば問題ないが、相互再生となるとアジマスの調整はシビアになる。 本来はテストテープを使うが、無いので400Hz、8000Hz、15000Hzの音を入れたテープを作る。 基準となるデッキは ソニーTC-555ESL、これにマクセルのURテープを使い内蔵のCALで録音。これで400と8000Hzのテープが出来る。なお、基準となるデッキのアジマスはナカミチのデッキのCALを録音したテープでとる。ナカミチのデッキは現時点で、丁度180度逆相であるのでちょっと大変だが・・・。 それで録音したテープは下である。全くと言って良いほど両方の山がそろっている。これを使い、ナカミチのデッキを調整していく。 まずは再生ヘッドから・・・。ナカミチのデッキを再生し、アジマスを調整して、最もレベルが上がる所にする。それが下の右の写真だが、2db程度の落ちとなる。 左右のレベルがあっていないのは、ソニーの出力が固定のため。次に、ソニーからのCAL入力で他のテープを用いナカミチのデッキに録音する。 それがその下の写真である。ノイズがやや増えたが、レベルはほぼ同じに再生された。ナカミチのデッキの自己録再では2db程度の高域落ちとなった。 再生のアジマスが終わったら、録音のアジマスを調整する。3ヘッド機ではとても重要だ。ソニーと違ってナカミチのデッキ581では、左右別々のバイアスと録音レベルを調整しないといけない。マニアックであるが、年代が経つと調整しても中々うまくは行かない。8000Hzで何とかなっても、15000Hzだと中々に難しい。アジマスずれは、ただ単に高域が落ちるのではない。分解能が最悪になる。つまり、ぴたりと合えば繊細な音が出る訳である。 TC-K5は高域のレベルがかなり低下、しかし波形は綺麗な感じだ。2ヘッドなので限界がある。高域を伸ばすには、デッキの裏もいじる必要があるだろう。 テクニクスRS-676Uは高域はTC-K5と同様だが、低域のノイズが増加している。 ティアックのAD-800はレベルは低下しないが、高域の波形が汚い。何となく硬い音はそのせいかも知れない。 本来ならば全て再生レベルを揃えて比較するべきだが、デッキにより可変も固定もあるのでそれは省略した。 同様にオープンリールテープデッキも調整した |
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ソニーTC-555ESL(ソニー録音テープ) ほとんどレベルの差はない。 |
ナカミチ581(ソニー録音テープ) 2~3db僅かだがレベルが落ちる。再生レベルは比較のため上げた。 |
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ソニーTC-555ESL(ナカミチ581録音テープ) 高域のレベルは落ちない。 |
ソニーTC-K5(ソニーTC-555ESL録音テープ) 高域のレベルが10~15dbほど低下するが、ヘッドの摩耗はないのか波形が鋭い。 ただ上下にふらつく。 |
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テクニクスRS-676U(ソニーTC-555ESL録音テープ) 低域のノイズが増加。高域のレベルは落ちているが、波形は意外と悪くない。 |
ティアックAD-800(ソニーTC-555ESL録音テープ) 高域は落ちていないが、8000Hzの波形が汚い |
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アジマスを調整すると、音が極めてすっきりとする。こもっていた音は改善される。40年以上前のテープとは思えないほど鮮明な音に驚かされる。 絶対的なものはCDなのだけれど、カセットデッキの音はそれぞれのデッキにより全て音が異なり楽しみが多い。 CDには人が介在しない。録音された物が、パカパカとコピーされ手元に届く。しかし、オープンリールテープデッキやカセットデッキは録音と言う作業が必要だ。 録音にはレベル合わせも必要だし、エアチェックならその時間に居なければならない。そういう点で全く違う。 今まさに流れている曲は、その当時・・・はるか昔にデッキに向かい、音楽と対峙していたその日その時そのものなのである。 録音機でなければ絶対に味わえない物がそこにはある。 |