対艦巨砲主義

高級オーディオは価格も高いが重量もある。
アンプやらスピーカーはその傾向が顕著だ。


別項で、アンプは重い方がいいと述べた。スピーカーも然り。

しかし、本当は軽い方がいいに決まっている。そして、小さければその方がいいに決まってる。飾りじゃないのだ。
ところが、そうはならないジレンマがある。

人間がこの大きさなのは(1m50cm~1m70cm)理由があるそうな。
地球の重力やら何やらに対して、一番バランスがいいのだそう。だから、カメラにしても大きすぎる物や小さすぎる物は
馴染まないのだ。バランスサイズというのが存在する。

オーディオの場合、音を再生するスピーカーは中高音部なら口径は10cmもあれば十分、しかし、低音はそうはいかない。
低域は空気を揺らすので、それなりの大きさのハコが必要なのだ。これがスピーカーが最も遅れている物とされる原因になっている。

増幅器としてのアンプは、実はほとんど進歩していない。
CDは1982年から34年目を迎えている。SACDは1999年からの規格だが15年を過ぎた現在でもは普及せず、知らない人も多い。
普及品に乗らず、新譜も少なく失敗したと言えるだろう。

技術の進歩で普及品の性能はアップして、重箱の隅を楊枝でほじくるような超高級機だけが、高級オーディオとして生きようとしている。
ハイレゾの機器にしても、DACなどは多分に上級機種などでも普及機と大して変わらない物が搭載されている。
ハイレゾの世界では、あのかつてのゴールドムンドのような現象が起きていると言っても差し支えないだろう。
同じコンバーターがあちこちの機種に乗っているのだ。これは、かつてのコンパクトデジタルカメラ時代、ほとんど全てのコンパクトデジタルカメラにソニーのCCD素子が採用されていたのと変わらない。もっとさかのぼれば、ブラウン管テレビ時代、ほとんどのブラウン管は
ナショナルやら三菱製の時代が長かった。良い物(部品)は買って乗せる、それが普通なのだ。

出力に応じてトランスやらコンデンサーは大きな物を搭載しなければならない。トランジスターの量も増える。必然的にヒートシンクも
大型となり、部品を支えるシャーシも厚く重くなる。しかし。電子部品(デジタル部品)は大して変わらなくても問題はない。ノイズの遮断等工夫はいるだろうが基本の基盤は共通でも問題はないはずである。最近はハイレゾの影響でヘッドホンアンプが出ており、従来のようなヘッドホンアンプでは心もとないので割愛したり、新たに設計し直しして搭載したりするようだ。
3万円のアンプと100万のアンプの違いはパーツなり色々あるが、基本設計が同じなら、余計な物を除くと同じものになると言って良い。
3万円のアンプに使っている全ての部品を最大ランクに上げれば、100万のアンプになるのだ。小出力で再生するならば、
周波数特性も大して変わらないはずだ。歪率が同じなら音も同じになるはずである。
同じにならないならば、それは何かが違うからである。

アンプを構成する部品が多ければ多いほど、色々な事ができる。色々な事ができますというのは、色々な事に対応する部品があると
いう事になる。パワーアンプの存在意義はここにある。プリアンプは、色々な事ができますのアンプになる。
パワーアンプは白いご飯で、プリアンプはおかずになる。プリメインアンプはかつ丼やら弁当になる。どれも違うのだけれども、同じとも言えるだろう。
大出力を出す場合。プリ部とパワー部を同居させるのは極めて都合が悪い。それは良く分かる。しかしながら、大出力を出さないのならば
ある意味では無駄なこととも言える。ノイズの元凶は電源であるから、それをどうにかして別にしようということはあるが、コストの割にはどうだろうか。あのノートパソコンの外部電源アダプターはどうだろう。あれはノイズのためでなく単純に邪魔なだけで外付けになったのだが・・・。兎に角腹の立つコードである。誰も外付けは望まないだろう。
置き場所無制限、価格度外視ならばそれでも許せる。

オーディオの世界で一番音の違いが顕著なのは、やはりスピーカーである。これはアンプと違い、高級機ほど差が少ないなんてことにはならない。高級機ほどに音は違うと言っても良い。まず、アンプのように周波数特性は平坦にならない。
アンプから音は出ないが、スピーカーは音が出る物だから購入時にはよほどの研究をしないと、大変なことになってしまうのだ。
高域にも、低域にも、中域にも機種により癖があるから良く聴いて、自分の好みに合わせなければならない。
アンプとの相性もある。部屋の相性もある。何よりも、店頭と自宅では同じ音にはならないということだろう。
理想は、自分でスピーカーを組み上げて調整するのが一番だが、効率は非常に悪い。第一にパーツが揃わない。

ちなみにアンプを構成する部品は抵抗・コンデンサ・ダイオード・トランジスタなど多岐多種類に渡る。一個の価格は非常に安い物なのだ。
数十万円のアンプを構成する部品でも、数万円のアンプでも大差はない。しかるに出る音は違いがそんなにあるわけではないのだ。
音が悪く感じるのは歪や雑音だから、原因ははっきりしているのだ。それらが抑えられていれば同じ音が出る。
つまり3万円のアンプと100万のアンプは同じ音がするのが当然で、そうじゃないとしたらおかしいのだ。

それでは、3万円のアンプと100万のアンプの違いはなんだろう。
それは高出力まで歪率を上げない工夫である。またノイズの増加を防ぐ工夫である。実はそれらに、対価の多くは注がれている。
ゆえに、ささやかに音楽を鑑賞する人に100万のアンプは無駄である。電気の無駄でもある。
あーそれでも欲しいぞ。


と言う訳で、オーディオの世界は難しい。


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