オーディオとカセットテープ、オープンリールテープの時代

今更だが、オーディオは1980年代にブームを迎える。
避けて通れないのが録音機、デッキの存在である。
この録音機の普及には、後のCDの普及同様フィリップスが大きく関わっている。
また、そこにはソニーがいた。

オープンリールテープレコーダーの歴史については詳しくは知らない。これは、開発が戦争の為であり、ドイツの潜水艦には搭載されていたとの記録がある。スイスのスチューダーが1949年オープンリールテープレコーダーを、ダイナボックスとして発売。有名なREVOXA77(1968年発売)は有名だ。
国内での最初はソニーで1950年に開発されている。オープンリールテープレコーダーとしては、ソニー、テアック、テクニクスが民生用では
御三家だった。中級機はソニー、テァックの順に幅広く、テクニクスは中級機種は少なく主に高級機種であった。
1960年代から1970年初頭まで、入門機はレバー式のメカニズムですこぶる操作性は悪かった。また、メーターもない物も多く有っても簡素なものであった。テアックは頑丈な作りで流行を追わず、オーソドックスなのが信条。音質は極めて素直なものであった。
筆者は初級機・中級機とオープンリールテープレコーダーを買い替えたが、テアックにはしなかった。ソニーフアンであるのが理由だが、
友人がテアックフアンであったのが決定的な理由でもある。友人のアパートで聞くテアックはやはり良い音であった。
その後数年し結婚し、購入したのはテアックであったのは言うまでもない。

それより以前、1970年代にははカセットが発売される。数年後にはカセットデッキが発売され、オーディオの世界にも小さなカセットテープが導入されるようになる。オープンリールデッキの存在は危うくなりかけていいったのだ。
テアックもカセットデッキを多数開発、メインに販売をしていく。カセットデッキの黄金期はオーディオの黄金期と完全に一致する。
(広義には1970年から1990年、狭義には1973年頃から1985年頃ではなかろうか。)カセットテープを使用した、カセットウォークマンが1979年に発売され、2010年に製造が中止。しかし、カセットテープを使用した小型の録音機は2012年まで生産された。
黄金期にオーディオのハイエンド機として存在したオープンリールデッキだが、カセットデッキの台頭に押され、ほどなくオープンリールデッキは主力から消えこととなる。
カセットテープはテープスピードが遅く、それがゆえに高域再生には限界がある。また、テープの幅も狭く、クロストークやらノイズの問題もあり、オープンリールデッキは揺るがない存在であった。しかしながら、あの大きく重くて場所を取る機器、テープの架け替えの煩わしさなど到底浸透されない理由は存在していた。それを打破するべく、当時のメーカーはカセットデッキの能力向上にに全てを掛けたのだ。
確かに多くの点でカセットはオープンリールに劣る・・・。しかし、音質は決して悪いものではなかった。テープに起因するノイズ、メカに起因するワウ・フラッターなど、それは様々な工夫で減少させられたのだ。

筆者がカセットデッキに関して記したのがある。

いまから数十年前、オーディオフェア会場でソニーはカセットテープである実験を大々的に行った。
それは
レコードとカセットデッキのすり替え実験というやつだ。
知っている人もいるでしょう。

壇上にずらりと並べた大型スピーカーから大音響でクラシックが流れる。
その瞬間
音は少しも変らず、
サーっというノイズだけが増えた。おおっという歓声があちこちから上がった。

テープスピードが4.75センチ/毎秒という超低速のカセットデッキの可能性が弾けた瞬間であった。
その瞬間から
カセットデッキは不動の地位を得、かの有名なウォークマンのヒットへと進んでいく。
 
この種のすり替え実験は日本ビクターもレコードとテープ(オープンリール)、レコードと生演奏などの例がある。
ビクターは黎明期の1960年代であり、ソニーの実験とは時代が違う。

記憶に定かではないが、カセットデッキ黎明期1971年頃のことと思う。デッキはラック用のタイプになる前、平置きタイプであったと記憶する。
違うかも知れないがTC-2300ではなかろうか。違っていてもこのシリーズであるのは間違いがない。
SONY TC-2300 1971年頃発売。オートリバースデッキ。

発売時価格59800円。
資料写真「オーディオの足跡」様から引用

主力となったカセットデッキの時代はしばらく続くが、オーディオの衰退とともに2000年代に入りやがて終わりを告げる。


オーディオの世界には、純粋に音楽だけ聴く人と、機器に傾倒する人が存在する。
レコードを収集する人は前者が多く、録音機などはほとんど見向きもしないケースが多い。エアチェックする必要がないからである。
デッキは録音するのが目的であるから、音楽テープは非常に少ない。それに高い。
レコードからテープに録音すると、レコードとは違った音になるのが普通である。録音機は優秀であるから、残さずに記録するが、
再生する音は確実にその録音機の音になるのだ。その変化もまた楽しみではあるのだ。

レコードに直接録音することはほとんどなく、多くはテープに録音しマスターテープとする。それをレコードとしてカッテングする訳だ。
つまり一度はテープを通している。レコードの音は本来テープレコーダーの音なのだ。
これはデジタルになった時代でもほとんど変わらない。
レコードの場合、再生にはカートリッジが必要でありこれが音質を左右する。また、回転するプレーヤーというメカニズムもあり
これもまた音質に影響を与えるのだ。
また、レコードは内外周での音質劣化が酷く、繰り返して再生するごとに溝はすり減っていく。
とても面倒なのがレコードなのだ。


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